朝はいくら早くても、柏駅から坐れることはない。

一番電車では、担ぎ屋の爺さん婆さん達が座席に荷物を置き、通路に野菜を並べてダッペ言葉で物物交換をしている。

箸がころんでもおかしい年代ではないのに実にゲラゲラ笑い、聞き耳を立てるとネクタイを締めて聞くには恥ずかしいような言葉を自然に発しながら、地元住民同士の移動式朝市をとり行っている。

たまにラッシュ時に彼等を見かけることもあるが、座席に置いた荷物を背負ったまま吊革下の床に坐りこんでいる姿は、「オラが坐る代りに荷物を坐らせてんだ」という主張が強く感じられる。これは、酔っぱらいやヤクザ風の男を避けるのとはまた別の意味で、前に立つのに勇気を要する。

帰りは始発の上野で2~3列車やり過ごせば坐れるので、出勤時ほど急いてはいないサラリーマン達は、新聞を読みながら列を作る。

取手までの緑色の常磐快速はそうでもないのだが、牛久や土浦まで行く常磐本線の各停は、ホームから発車待ちの列車内を見ると、空いた席が幾つもあるように思える。「ラッキー」と思って急いで飛び乗ると、占有者の存在を誇示するバッグや上着が置かれていてがっかりする。そのがっかり顔に対し、「発車まで5分の時期に席が空いているなんて考える方が馬鹿だ!」と周りの常連客の冷ややかな目が囁いている。そんな時は、「始めから坐ろうなんて思ってないよ、混み具合を確かめただけだよ」という風を取繕わないと惨めになる。

席を空けている者のほとんどは、確保するや否やすぐにキヨスクに走り、ワンカップ大関とするめイカを買い込むことに全力を上げており、発車前から酒盛りが始まる。4人掛け席をグループで確保した連中は必ずといってよいほど宴会気分を満喫しながら、また1人客は1人客なりに孤独に、しかし悠然と飲み始めるのである。

東海道線や横須賀線でも若干見られるらしいが、常磐本線の酒盛りは元祖、正式、極めつけ、本格的などの修飾語がつくほどであり、年季の入った客が多く、つくばに勤める独立行政法人の先生方でもこれに乗るとどうしても缶ビールを買いたくなるようである。

偏見は持っていないつもりなのだが、酒宴列車の時間帯でなくとも、この電車に乗っている客質、客層は、田園都市線や井の頭線のそれではない。この沿線客の名誉の為に敢えて言うが、客質とはその客の本来有する資質ではなく、常磐線という列車の中が持っている雰囲気の質である。

関西ならば、決して阪神電鉄や阪急宝塚線ではなく、近鉄南大阪線や南海線に相当すると私は自信を持って言える。

H22.11.20 清水一都

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