平成27年1月 から実質的増税となる相続税対策として、アパート経営に対する関心も高まる中、各ハウスメーカーが「アパート取得による賃貸経営」を提案し、「賃貸(ア パート)も経営であるという視点から他とは差別化を図るべきである」、「30年一括借り上げ」と言った契約条件を新聞紙上等で大々的に広告してセミナーも 開催し、読者を勧誘しています。相続税対策や資産活用に悩んでいる方は、魅力的な提言と受け止め、実行に移そうか?と考えている人も多いのではないでしょうか。そこで、アパート経営のメリット、デメリット、そしてハウスメーカーや不動産業者が盛んに提案する「一括借り上げ(サブリース)システム」の問題点等について考えてみました。

自己資金で自分の土地に賃貸住宅を建設した場合の最大のメリットは、何と言っても大幅に相続税の評価額を減額(概ね2/3)でき、節税が図れることです。また、評価が大幅に下がったアパートを「相続時精算課税」制度を用いて子や孫に生前贈与した場合、贈与した後の賃貸料が贈与を受けた人に帰属するため、相続開始までの期間が長ければ長いほど、贈与した人(亡くなった人)の相続財産を減らす効果があります。

一方、デメリットは、

  1. 不動産は相続財産としての遺産分割が困難なこと
  2. 時の経 過とともにメンテナンス費用がかかること
  3. 場所によって賃貸経営の成否が大きく左右されること
  4. 法律に精通していない建築主が多く、注意義務違反や賃貸経営の在り方によっては法令上のトラブルに巻き込まれるケースが多い

などが挙げられます。このように、アパート経営を考える場合は、単に相続税対策だけでなく、メリット、デメリットを十分に踏まえて検討することが非常に大事になってきます。

ところで、ハウスメーカーが大々的に勧める「一括借り上げシステム(サブリース 契約)」の場合、建築主(アパート経営者)は、アパート建築資金と遊休土地を提供するだけで、建築後の家賃保証や管理を業者(管理会社)が一切行ってくれ ますから、オーナーは手間暇かからず便利な賃貸経営と思われがちです。

しかし、一見便利と思われる契約ですが、実は思わぬ落とし穴が潜んでいることを十分に理解したうえで考えなければなりません。一体どこに問題があるのでしょうか?

  1. 通常ハウスメーカーがアパート建築を請負い、系列の管理会社と業務委託契約を結ぶことになりますが、その際建築価額が相場と比較して妥当な金額かどうか十分に検証する必要があります。
  2. 管理会社は借地借家法によって賃借人として保護されるため、中途解約が困難になります。
  3. サブリース契約は民法601条に規定する「賃貸借」となるため、例え契約期間中であっても、契約会社は賃料の引き下げ請求ができるため、「契約当初の賃料が将来に渡って保障されるものではない。」ことを建築主は理解する必要があります。また、契約書の文面に「・・・家賃は値下げしない」と明記されていた場合であっても、法律上その条項自体が無効とされ、管理会社は家賃の値下げ請求ができるため、契約内容を鵜呑みにしない用心深さが必要です。
  4. 賃貸人(大家)の義務に「賃借人の費用償還請求権」(民法608条)がありますが、修繕費などについて、契約会社が系列会社を指定し、かつ様々な理由で負担を求め、中には法外な金額を請求される場合もあるため、アフターケアの必要性および金額の妥当性については十分に注意しなければなりません。
  5. オーナーも管理会社と互角に渡り合えるような理論武装が必要ですが、信頼できる専門家を置くなどして、業者の言いなりになることは避けなければなりません。

子供達のことを考えてやったのに、かえって問題を抱えさせてしまった。  後悔先に立たず!十分気を付けたいものですね。

H26.8.1 税理士 大人信一

次回セミナーの予定